俺がガキの頃、銭湯で背中全面刺青入れてるオッサンによく会った。
たまに話かけてきて顔馴染みになり
「坊主、肩までつかれよ」とか「あと20数えるまで我慢しろ」とか言われてた。
親父はびびって見て見ぬふりをして、まだ小さかった弟の方ばかり世話をしていた。
いつも一人だった俺はそのオッサンと話をする事が楽しくて、銭湯が楽しみになっていった。

ある日、俺が湯船手前で転んで頭を打って出血した事があった。
親父より早く湯船からオッサンが飛び出してきて、
俺を担ぎ上げ、脱衣場に連れて行ってくれた。
「何をしてるんだバカ!」と俺を叱りつける親父に、オッサンが一喝。
「てめぇがおんちゃん(弟の事)ばかり可愛がってるから、この子がずっと寂しい思いしてたんだろうが!」

あれ以来、あの銭湯には連れて行ってもらえなかったが
あのオッサン、元気だろうか。
またいつか、一緒に風呂に浸かって一緒に100まで数えたい。