たった一度、ウチの銭湯に来たばかりにあられもない姿を晒してしまった奥さんのケースでは、「気の毒なことをした」と罪悪感にも似た気持ちを覚えた私だが、同じ女性客でも常連さんになると話は違う。
同じ町内でスナックを経営するママさんもその一人。
もう若くないし美人でもないが、小柄で裁けた明るい女性。
15年以上前から、彼女は店を開ける前に毎日必ずウチの銭湯に来てくれる(ウチは年中無休)、大事なお得意さんである。
それゆえ、番台を廃止するまでほぼ毎日、彼女の裸を拝んでいた筈なのだが、不思議にほとんど記憶に残っていない。
まあ、常連さんとは女房と同じで、空気みたいな存在なのだろう。

記憶にあるのは、かなり以前に番台と脱衣所の間で交わした会話。
ママ「こんにちは」
私「いらっしゃい」
しばらくして、
ママ「イヤだー!何見てるの、エッチ!」
私「別に何も見てないよ。それに見られたからって、今さら減るもんじゃあるまいし」
ママ「見られたら確実に減るの!見るんなら、拝観料を払いなさい」
「誰がそんなオバサンの体に!」と言い返したかったが、そこは大事な常連さん。
グッと言葉を呑み込んだ。

その間、彼女は無論スッポンポン。
「見るな!」と言うわりには、タオルで前も隠さないので、言い返す度に私も彼女の裸を正面から見ることになる。
その矛盾に後から結構笑えた。
天地神明にかけて誓う(手鏡教授ウエクサの台詞)が、私は意識的に彼女の方を見ていたわけではない。
後日、彼女のスナックに飲みに行ったとき、からかってやろうと思い「はい、拝観料」と珍しい2000円札を差し出すと、「あら、ナマなのにこんなに安いの?」と言いながらも、ちゃっかり受け取った。
彼女の方が私よりかなり上手。