バロック時代の「フランス風序曲」(もしくは単に「序曲」)と呼ばれた音楽形式の
前半部分に使われる荘重な付点リズムは、王の入場に際して使われている。
フランス風序曲の演奏に合わせて国王が入場するのが当時の習わしであった。
つまり、付点リズムと「行進」や「歩み」は、当時の伝統において
結びつけられたものである。

バッハは、 カンタータ第61番「いざ来ませ、異邦人の救い主」の第一曲を
フランス風序曲の形式を用いて書いているが、これが「王であるイエスの入場」
を意図していることは明らかである。

マタイの第一曲は、フランス風序曲の形式で書かれているわけではないが
付点リズムを彷彿とさせる通奏低音のリズムが、イエスの「歩み」を象徴している
ことは以上の点からも明らかである。