朝比奈の練習は大雑把に思えるが的確だ。
弦楽器はパート事に執拗に基礎を叩き込むが
基礎訓練はプロ奏者にはキツいが、朝比奈のトーンはあくまでも紳士的で、懇切丁寧に言葉で微妙なニュアンスを繰り返し
敬語で伝えてゆく。時には歌って教えることもあったが、音程は確かで、とても上手かった。
カッコよさなんて微塵もない愚直な練習を繰り返し、本番では練習以上の能力を引き出し奇跡的な名演奏を数多く作り上げて来た。
指揮自体見ていて決して上手いとは言えなかったが、堂々とした体躯で姿勢は良く、燕尾、タキシード、モーニングは立ち襟の正式なもので
他の指揮者は略式の格好だったので、とても舞台栄えし、美しかった。
カーテンコールも惚れ惚れとするぐらい落ち着き払っいて、時には胸に手を当てて応えている姿が印象に残っている。
楽員を一人一人立たせると言うやり方はせず、
楽員は総立ちで朝比奈を讃え、適度に引き上げたあとは暫し拍手が続き、朝比奈一人がスタンディングオベーションとブラヴォーコールに応じるというスタイルが定着していた。
練習から終演までが正にプロの中のプロで、
聴衆を魅了し尽くしたあの光景は多くの人々の記憶に残り続ける事だろう。