雨はまだ降りつづいていたが、服を買うのにも飽きたのでレインコートを探すのはやめ、
ビヤホールに入って生ビールを飲み、生ガキを食べた。ビヤホールではどういうわけか
ブルックナーのシンフォニーがかかっていた。何番のシンフォニーなのかはわからなかったが、
ブルックナーのシンフォニーの番号なんてまず誰にもわからない。
とにかくビヤホールでブルックナーがかかっているなんて初めてだ。

――村上春樹「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」