師走の風物詩・ベートーベン「第九」公演が、新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の水際対策強化でピンチに陥った。出演予定だった外国の指揮者や歌手が来日できなくなり、オーケストラは大慌てで代役探しに走り回ることに。年末の「第九」は多くの集客が見込めるオーケストラにとって重要な公演。関係者は事態の収拾に必死だ。

 NHK交響楽団は、ファビオ・ルイージさんと3人の独唱歌手が入国できなくなったことを受け、尾高忠明さん指揮、日本人歌手に変更して公演を行う。読売日本交響楽団も、東京と大阪の計6公演で指揮を予定していた外国人が入国できず、すでに来日中の別の指揮者に代役を頼んだ。

 東京都交響楽団の音楽監督・大野和士さんは、新国立劇場でのオペラ公演を終え、ブリュッセルの自宅に戻る予定だったが、24〜26日に行われる同楽団の「第九」3公演の指揮者が来日できず、急きょタクトをとることに。「本当は休養したかったが、音楽監督としての責務がある。最善を尽くします」と話す。ほかに新日本フィルハーモニー交響楽団や東京フィルハーモニー交響楽団も指揮者が変更になった。

 しかし、開催にこぎ着けたとしても、海外からの出演者を目当てにチケットを購入したファンのことを考えれば、関係者の思いは複雑だ。あるオーケストラの広報担当者は、「数年かけて計画を立てても、突然、『あすから入国禁止です』と言われたら、なすすべがない。お客さんの期待を裏切るのがつらい」とこぼす。

 日本クラシック音楽事業協会の入山功一会長は、「今回は迅速な水際対策が求められているのでやむを得ないが、先行きが不安だ」と語り、「政府にはなるべく早めに今後の見通しを示してほしい」と要望する。