僕は今タイ・フーンのアルバムを目の前に、あらためて”言葉の無力さ”を切実に感じとっている...どんな言葉を、どんな形容詞を劇的に並べたとしても、その文章はタイ・フーンのあまりにも繊細に鳴り響く音の前に化石と化してしまうのだから

クリムゾンが自らの宮殿に永遠の眠りを求めた時、神々は一つのグループに生気を吹き込まれた。
まるでクリムゾンがそうだったように、そのグループもまた神々の聖使としての義務をまっとうせしめんが為め、天上の光に導かれ今地上に降りたった。神々はこの聖使をタイフーンと呼ぶ。

さあ、レコードを手にターンテーブルに運んでいくんだ。ただ他のアルバムの時と同じように載せてはいけない。神を敬うように、愛する人をやさしく愛撫するように....

その夜、幸福感に満ちた至上の感動が、心ばかりでなく、僕の住んでいた下落合の狭いアパートの部屋を独占した。
本当に美しい(笑)それ以外に言葉は見当たらなかった。TAI PHONGの音と自分の感性が一つになり、小宇宙の如く揺れているのを感じた。

神々から授かった魔性の魅力を武器に、剣なき戦いを挑む聖使タイ・フーン!僕は彼らに忠誠を誓う下僕となる契りを結んでしまった。
'76.9.27 伊藤”タイ・フーン”政則/