愛にとっては、ようやく訪れた冬休みである。

今年はクリスマスイブというロマンチックな響きに乙女心を震わせている余裕などなかった。担任の中年教師「高橋」によって吹き込まれた「新しい生命」は、十五歳の少女の胎内で順調に成長を遂げていたからだ。

下腹部に痛みを覚えたことも何度かあった。気分が悪くなって学校で倒れそうになったことも。嘔吐は数え切れない。

しかし、愛は二学期の中学校生活をのり切った。学校のクラスメイトたちや高橋はおろか、二人暮しの母親にさえも妊娠の事実を隠し続け、時に来るはずのない生理を口実にして、体育の授業を見学したり高橋の肉欲をかわしたりしながら、何とか流産の危機を免れたのだ。

妊娠17週目―――つまり、妊娠5ヶ月。愛のか細いウエストの深奥で、胎児はしきりと動くようになっている。それと同時に、十五歳の少女のあどけない肉体も「蒼さ」や「硬さ」というものが薄れ、徐々に丸みを帯びた『乙女の肉体』へと変化している。もはや「少女」は『少女』ではない。その「BIOS」は大きく書き換えられたのだ。三十過ぎの中年教師が体内で吟熟させた悪意と欲望の「JAVAスクリプト」(精子)を、少女は自身の胎奥に自動展開し、そのまま5ヶ月近くも常駐させてしまった。もう「アンインストール(堕胎)」は不可能なのである・・・・。