「国のあり方」が大きく変えられようとしている。かつてはアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国として世界を席巻した日本だが、GDP(国内総生産)では2010年に中国、23年にはドイツに抜かれた。

日本の影響力が薄まるとともに、ネット世論に先導される形で国民性も変化しつつある。本来の保守主義が持つ「包摂」がなくなり、国情が変わりつつあるように思われる。こうした現状に何を思うのか、前後編に分けて石破茂前首相に聞いた。

■「辞表が出なければ天皇陛下に申し訳がない」

(略)

■日韓の近代史を受け止めなくてはいけない

 ――そういう意味では、本当の日本の伝統、歴史、そして日本という国のあり様について、改めて認識する必要があるということですね。

 はい。日本の将来、アジアの将来のために、いま一度、歴史をきちんと直視すべきではないかと思っています。現下の北東アジア情勢において、日本と韓国は今以上に緊密に連携しなくては、中国や北朝鮮、あるいはロシアの脅威に対抗できない。

 そのためには、われわれが日韓の近代史を受け止めなくてはなりません。戦前に同じく日本領土となった台湾との関係は極めて良好なのに、なぜ朝鮮半島は違うのか。それはそれぞれが背負う歴史が異なるからです。

 日清戦争の結果、1895年の下関条約で日本に割譲された台湾は、清王朝から「化外の地」として扱われ、あちこちでマラリアが蔓延する、放置された島でした。そこに日本は近代をもたらしました。鉄道を敷き、上下水道を整備し、学校を建て、人々に教育をほどこしました。だから、台湾は日本のおかげで開化したと捉えられました。

 一方で朝鮮は、当時の朝廷がいかに腐敗していようと、立派な独立国家でした。そこに対して日本は、善意ではあっただろうが「同一化」を求めた。「今から君たちは日本人だ」「望めば日本人の名前を名乗ることができる」「神社を拝みなさい」「日本語で話しなさい」と言われ、受け入れられるはずがなかった。

 こういった歴史上の過ちを正面から認めて反省する必要があります。もちろん、私たちが直接やったことではないから、その意味で謝罪はできませんし、その立場にあるわけでもありません。

 しかし、大日本帝国と日本国は連続する国家であり、日本国憲法も帝国憲法を改正する形で作ったものです。国家として連続している以上、日本国民であるわれわれは大日本帝国が何をやったのかについて、客観的に正しく認識すべきです。

 ――もう1つの隣国である中国についてはいかがですか。

 歴史を客観的に認識すべきということは同じです。大日本帝国が中華民国を侵略したのであって、逆ではありません。そして戦後、多くの中国人が日本人残留孤児を引き取り育ててくれました。

 今の中国は共産党の一党独裁国家です。人民解放軍は中国共産党の軍隊であり、民主主義のわれわれとは価値観の違う国です。そういう意味では韓国とは違います。

 しかし、ののしり合っていても、何も日本の国益に資することはありません。むしろ、世界一の経済大国を目指している国にケンカを売り続けるメリットがどこかにあるのでしょうか。

 それよりも、中国が抱える問題、例えば環境問題や人権問題などについて、日本は何ができるのかを考え、協力できるところは協力したほうが、よほど国益に資するのではないでしょうか。

■過去の歴史を含めて自国を守っていく

 ――しかし、そのような考えを持つ政治家は、ネットでは激しく誹謗中傷される危険性が大きいです。

 正論を述べると誹謗の対象になってしまうというのは、非常に残念です。2月の衆院選では、岩屋毅さんがずいぶんやられたようですね。それに負けず、よくぞ勝ち残ってこられたと思っています。畏友である村上誠一郎さんもそうです。比例での優遇を約束されていたのに、反故にされた。それでも当選したのは、やはり神様はいらっしゃるのだと思いました。

 私たちは、将来の日本国民に、この国をできるだけいい形で渡さないといけません。戦争に敗れて焦土となったわが国を、われわれの先達は辛苦の末に復活させ、世界有数の経済大国に発展させました。だからこそ、今この国を誤った方向に行かせるわけにはいかない。

 過去の歴史を含めて自国を守っていくことこそ、保守政治家が負うべき責任ではないでしょうか。

安積 明子 :ジャーナリスト

7/29(水) 8:38  東洋経済オンライン
https://news.yahoo.co.jp/articles/eab6c6352acffb08638143a9036d98cdc64ca629