「太陽系の惑星、水洗トイレ、はげ、素粒子は存在する。存在しないのはこれらすべてを含むとされる『世界』のほうだ」
と断言するのは哲学者のマルクス・ガブリエルである。
彼の『Warum es die Welt nicht gibt(なぜ「世界」が存在しないのか)』は、6月に出版されるとすぐにベストセラーになった。


ガブリエルは29歳のときにボン大学の認識論・近現代哲学講座の主任教授に就任、現在33歳である。
ドイツの哲学界でこんな若くして正教授になる例はない。メディアは彼を「神童」扱いし、本書も話題にしている。
国際的に影が薄くなったドイツ哲学を活性化する役回りを期待しているのかもしれない。


売れる哲学書には二つのタイプがある。よくできた解説書か、生命や愛などを扱った実践哲学か。
彼の本はそのどちらでもない本格的な認識論だ。それでも売れているのは、表現が面白いからだ。


古代ギリシャ以来、哲学者がその存在を前提としてきた「世界」を、ガブリエルは、個々の事象をすべて収容できる巨大テントにたとえる。
テント全体を見ようとする人は外に出なければいけない。
外に出た途端、今までのテントと、それを外で眺めている人を収容できるもっと大きなテント(=世界)の想定が必要になる。
こうして少し前まで「世界」とされていたものも、ただのテント(=個別の事象)に転落。これが「世界」が存在できない理由だそうだ。
http://globe.asahi.com/bestseller/2013091200025.html?page=1