ハイデガー思索のケーレ(Kehre 転回)

“しかし、そうはいっても、主観性を捨て去ってゆくこの別の思索を、
十分に、跡づけ直しつつまたそれと一体化しつつ遂行してみることは、
『存在と時間』の公刊に際して、「時間と存在」というその第一部の第三篇が、
差し控えられたことによって、困難にさせられている。
ここで全体が逆転する。問題の第三篇が、差し控えられたのは、思索が、
この転回を十分に言い述べようとしてもうまくゆかず、また、
形而上学の言葉の助けによっては切り抜けられなかったからであった。
一九三〇年に思索されて打ち明けられながら、しかしようやく
一九四三年になって初めて印刷された『真理の本質について』という講演が、
『存在と時間』から「時間と存在」への転回の思索の内部を窺わせる若干の洞見を与えている。”

『「ヒューマニズム」について』(渡邊訳)より