>>226
“かくの如く、教育・学問・政治・経済等の諸分野に亙つて浸潤してゐる西洋近代思想の帰するところは、結局個人主義である。
 而して個人主義文化が個人の価値を自覚せしめ、個人能力の発揚を促したことは、その功績といはねばならぬ。
 併しながら西洋の現実が示す如く、個人主義は、畢竟個人と個人、乃至は階級間の対立を惹起せしめ、
 国家生活・社会生活の中に幾多の問題と動揺とを醸成せしめる。
 今や西洋に於ても、個人主義を是正するため幾多の運動が現れてゐる。
 所謂市民的個人主義に対する階級的個人主義たる社会主義・共産主義もこれであり、
 又国家主養・民族主義たる最近の所謂ファッショ・ナチス等の思想・運動もこれである。

 併し我が国に於て真に個人主義の齎した欠陥を是正し、その行詰りを打開するには、
 西洋の社会主義乃至抽象的全体主義等をそのまゝ輸入して、その思想・企画等を模倣せんとしたり、
 或は機械的に西洋文化を排除することを以てしては全く不可能である。”

― 『国体の本義』 文部省編 (1937)p154-155