職員室を出て、東から西校舎に抜ける吹き抜けになっている渡り廊下を歩いている時に、植田の向かいからから智子が歩いてくるのがわかった。
植田はそれを見て「智子」と一声掛けたが、智子は植田の右横を無視して通り過ぎようとした。
「ちょっと待てって」植田は瞬間、智子の左肘を掴んだ。
「いや、離して」智子は植田の手を振りほどいて、ピタッと立ち止まって言った。
「何なの一体? 私が悪いの?」
「いや、違うんだ。あの時は……」
「付き合ってないって言ったでしょ」
「悪かった。違うんだ」そう言って、植田は我に返った。廊下伝いに歩いていた生徒が立ち止まってこちらを注目している。
植田は智子の腕を再び掴んで、上履きのスリッパのまま外に出た。智子を校舎の裏手に連れて行き、植田は顔の前で手を合わせた。
「おまえを傷つけるつもりはなかった。ほんと悪い」と植田が言うと、智子は溜息をついて言った。