思うに、死刑をめぐる議論が噛み合わないのは、 
賛成派と反対派では大前提が違っているのに、 
それが明確にされないまま枝葉の方に話がそれて行きがちだからです。 

反対派の大前提は人権思想です。 
もっと明確に表現すると、「人間の生命、 
人間の幸福は客観的な価値であり、その 
大切さはその人間の個別的属性に関わらず平等である」という考えです。この前提に立つ限り、死刑を(というか、本当は刑罰制度自体を) 
正当化することは、困難です。 

賛成派の大前提は、応報思想です。 
明確に言うと、「悪いことをした人間は、 
その悪さに応じた重さの罰を受けるのが 
当然であり、受けないことは不当であって 
許されない」という考えです。 
なお、ここにいう「罰」とは、はっきり言えば 
辛くて苦しい目に会うこと、人権を侵害 
されることです。現行の刑罰は、行為類型としてはみな犯罪に該当します。 
このような前提に立つ限り、ある種の行為を 
した人間を死刑にするのは当然で、 
それ自体が正義にかなったこととなります。