130年を知る為の100冊
雑誌『中央公論』2017年9月号

松岡正剛:さて、これまで取り上げて来なかった、アメリカの思想を見ていきましょうか。
僕は先ずチャールズ・パースの記号論、次にプラグマティズム、そしてアブダクション理論。
この三つを重視したいですね。これらはやがてアメリカの分析哲学となって、
クワインやローティ、ディヴィッドソンらの議論を作りましたね。

佐藤 優:アメリカの分析哲学という分野を、日本に知らしめたのは廣松 渉さんだと僕は思っています。
70年代の五木寛之さんとの対談の中で、廣松さんは哲学には大きく分けて三つの流れがあると指摘します。
マルクス主義哲学、実存主義哲学、分析哲学です。
そして、分析哲学とは言語であり、論理であることを丁寧に説明されています。

第82冊『哲学に何ができるか』 1978

佐藤:ところで、分析哲学で良い本と言えば何でしょうかね。

松岡:僕はフレーゲの "概念記法" を出発点にして、ライル、カルナップ、そしてクワインに進んだのですが。
今思うと矢張り、ローティですかね。

第83冊『哲学と自然の鏡』 1979

佐藤:うーん。これは難しいですね。

松岡:そもそもアメリカのポストモダンには、欧州とは違う発展の仕方があります。
それはポスト・インダストリーという発想があったからなのです。

とりわけ60年代から70年代にかけて、ダニエル・ベルは三部作になる著作を執筆して、工業に代わって、
知識・情報・サービス産業が重要な役割を果たす "脱工業社会" が出現すると提唱します。

第84冊『脱工業社会の到来』 1973