「保守論壇」の変容と読者の教育
―90 年代出版メディア編成と言論の存在様式の視点から
倉橋耕平
はじめに
2010 年代に入り、「論壇」をめぐる研究が増えてきている(竹内 2011、上丸
2011、根津 2013、竹内・佐藤・稲垣編 2014、大澤 2015 など)。とはいえ、こ
れまでの同分野の研究蓄積は、まだまだ少ない(竹内・佐藤・稲垣編 2014:
312)。とりわけ、先行研究では「論壇」の成立期と特定の媒体のマクロな変化
を、特集されたテーマや知識人の動向や、創刊時の歴史経緯に着目する形で言
及する歴史研究が多い傾向にある 1
。そして、その対象時期も成立時期から
1970 年代までに限られ、回顧的に記述されるものが中心となっている(田中
1999: 193、奥 2007: 225)。
他方、近年の「論壇」に着目する研究はほとんど存在しないが、2000 年代
に焦点を当てた検討が徐々に登場している(樋口 2014、能川・早川 2015)。そ
れらは、現在の「右派・保守論壇」の言説と排外主義(ヘイトスピーチ)との
関連で論じられてきている。例えば、樋口直人は、現在の右派言説や排外主義
言説は、マンガやインターネットのサブカルチャーを背景としていることを指
摘している。そして、それらサブカルチャーは保守論壇誌と参照関係にあり、
かつ排外主義が運動への動員の言説機会として近隣諸国との歴史認識問題など
1990 年代中盤以降右派・保守論壇で取り上げられた話題を利用していると分
析している。確かに、アジア諸国への憎悪の言説(近隣諸国との摩擦論)が、
論壇誌やサブカルチャーに現れる時期は揃っていると指摘されている(樋口
2014: 67, 143-162、上丸 2011: 274-298)。
http://www.ritsumei-arsvi.org/uploads/center_reports/26/center_reports_26_10.pdf