浅田 しかし、ポピュリズムを助長した責任は学歴中心のメリトクラシーにもある。確かに、有色人種であれ女性や性的マイノリティであれ、勉強していい大学を出ればグローバルに活動できる、それは素晴らしい。だけど、誰もがそうできるわけじゃなく、メリトクラシーは新たな階級分化を生み出す。

とくに、旧来の労働組合中心の「第二の道」(社会主義)を捨て「第三の道」を選んだビル・クリントン以降の民主党は、経済的な「再分配」に関してはウォール・ストリートに代表される「第一の道」(資本主義)に限りなく接近する一方、マイノリティも真っ当な市民として認めるという「承認」を前面に出し、アフリカ系のバラク・オバマや女性のヒラリー・クリントンを大統領候補に担いだ。

だけど、グローバルな競争に敗れた斜陽産業で働く低学歴白人男性労働者なんかにしてみれば、マイノリティ出身の民主党の政治家が小難しい美辞麗句を並べる一方、アメリカの主人公だったはずの自分たちの雇用を保証してくれない、それが許せないんだね。

そこにドナルド・トランプが登場し、民主党はもちろん共和党主流も含めたエリートたちの偽善を粗野な言葉でぶった切り、マイノリティなんかくそくらえという露悪的な居直りで、知性じゃなく情動の次元において大衆の支持をつかんだ。これが現代の反知性主義的ポピュリズムでしょう。

もちろん、トランプ自身はグローバル資本主義の波に乗ったインチキ事業家だけど、粗野な言葉でホンネを丸出しにするところが大衆にとってはかえって魅力的だった。トランプの経済政策で損をするのが自分たちだとわかってても、トランプが高学歴エリート(とくにマイノリティ出身の)を引きずり下ろしてくれることを大衆は望んだ。

その責任は「再分配」で労働者の期待に応えられず、かわりに「承認」ばかりを強調してきた民主党エリートの側にもあるんで、あらためて「再分配」を強調しようとするジョー・バイデン政権の姿勢は基本的には正しい──実際にはなかなかうまくいってないけれど。

この話は日本にも当てはまるんで、連合はいまや自民党に接近してるし、野党も成果を出せない、その隙に維新のようなポピュリズムが広がっていくわけでしょう。そこで「大阪の人口あたり死者数が突出して多い」とか言っても、情動的な次元で維新に惹かれる人たちにはほとんど響かないんだな。