哲学の仕事においても一応、三つでひと組ができて、小説の方もひと段落ということになり、そうするとじゃあ次はどうするかという話になってくる。いよいよ人生も後半に入ってくるわけです。芸術論の本はキャリア後半への橋渡しでもあるわけですが、さてこの先どういうことを予定するか。

少しだけ予告的なことを述べたいと思います。ひとつには、哲学の大きな本を書こうと思っています。これはノートを作り始めているんだけれど、キーになるのは「有限性」という概念です。

ざっくり言うと、人間っていうのは、他の動物と比べて思考の可能性が広い——あるいは、これはいろんな言い方があり得るけれど、「認知が多義性に開かれている」とか、「本能的規定性に対してとりうる行動の可塑性が高い」とか。人間は「過剰」である、ということですね。で、その過剰さに一定の制限をかけることで社会や文化が成り立っている。このことを僕は「有限化」と呼んできた。さらに言えば、社会や文化以前のインフラのレベルで、認識とか言語とか人間の理性的作動自体が、有限性というモメントなしでは成立しないだろう。こういう考えを基軸とする本です。『有限性の問題』というのがワーキングタイトルで、このタイトルは九鬼周造の『偶然性の問題』を下敷きにしています。

上のような考え方はいろんな文章に分散してこれまで述べてきたけれども、本格的にそれに集中して議論を展開し、またそれを哲学史を辿り直して位置づけるというようなことになると思うんですね。これは急がずにやろうと思っています。大きな仕事としてはそれを数年先に向けてポーンと投げておいて、流れのなかでいろんなことをやっていくと。小説ももちろん書くことになります。