山月記令和版 作者ケンモメン

「あぶないところだった」と繰返し呟くのが聞えた。
その声に津田は聞き憶えがあった。驚懼の中にも、彼は咄嗟に思いあたって、叫んだ。「その声は、我が友、浩紀ではないか?」
津田は浩紀と同年に進士の第に登り、友人の少かった浩紀にとっては、最も親しい友であった。
温和な津田の性格が、峻峭な浩紀の性情と衝突しなかったためであろう。
「如何にも自分は筑駒文一東大院博士の浩紀である」