出生の問題は、その強制性にある。強制収容所に倫理的な問題があることを
人々は容易に認められるのに、それと同様の性質を持つ出生に対しては、
それを少しも認めない、というのはおかしなことである。

強制付与される自分で選択した覚えのない遺伝子、家族、親類、民族、国、
生育環境、経済状態、時代、法律、物理環境、社会環境、運命、と個人を形成する
基底となるほとんどの要素は強制で自分の意志とは無関係に決まっている。

通り魔に殺傷されることを自己選択する人間がいるだろうか?
震災の大津波に飲み込まれて死ぬことを自己選択する人間もいないだろう
それは、すべて外界から強制付与された望まれていないアクシデントだろう。

人間の一生にはそうしたアクシデントや不幸に遭遇する可能性が低くないのだから、
出生を祝福されたもののようにみなすのは過誤であろう。