柄谷行人『交換様式論入門』

未開社会において、互酬交換が社会構成体を形成する原理であったことは疑
いがありません。しかし、それは最初からあったのではない。人類が狩猟採集
遊動民であった段階では、B・C だけでなく、Aも存在しなかった。そこでは、
生産物は均等に分配されたと見てよいでしょう。遊動しているため、蓄積する
ことができないからです。遊動的バンドは、狩猟のために必要な規模以上には
大きくならず、また小さくもならなかった。集団の成員を縛る拘束もなかった。
他の集団と出会ったときも、簡単な交換をしただろうが、戦争にはならなかっ
た。このような状態を、私は原遊動性 U と名づけます。