フロイトは、世界宗教を「抑圧されたものの回帰」とみなす。私はそれに同意する。しかし、抑圧されたものは「原父」のようなものではなく、いわば「社会的なもの」である。物象化とは、このことを意味する。それは、「人間と人間の関係が物と物と物の関係としてあらわれる」とか、関係が実体化されることを意味するのではない。(柄谷行人『探求�U』第三部「世界宗教をめぐって」1989年)