反出生主義に内在する詭弁構造の分析 ―倫理的一貫性の仮装と責任回避のメカニズム―
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1. はじめに

反出生主義(Antinatalism)は、「生まれてこないことが最も倫理的である」とする思想であり、デヴィッド・ベネターらの論によって一定の理論的整合性が主張されている。
しかしその一方で、反出生主義が現実社会における倫理的課題(苦痛・救済・支援・対話)に対して不誠実であるという批判も根強い。

本稿では、反出生主義者の代表的言説においてしばしば見られる論点回避的・詭弁的な構造を、倫理哲学・形式論理・言説分析の視点から明らかにする。
とくに、苦痛軽減主義(negative utilitarianism)との整合性をめぐる議論を軸に、「反出生主義者はどのようにして批判を避け、正当性を装うのか」という問題構造を照射する。
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2. 詭弁構造の一般的特徴

反出生主義的言説における詭弁の構造は、以下のようなパターンに分類される。

2.1 認知的すり替え(Cognitive Substitution)

批判の焦点(例:「社会的苦痛への責任」)をすり替え、「思想の整合性」や「倫理的一貫性」など形式的な論点に逃げ込むことで、実質的な批判の射程をかわす。

2.2 主体の転移(Shifting Agency)

自分の言説に責任を取らず、「AIがそう言った」「論理的にそうなる」といった非人格的権威やアルゴリズムに判断を委ねる。これにより、主張と責任の乖離が意図的に作られる。

2.3 偽の両立性(False Compatibility)

「反出生主義は苦痛軽減を否定していない」と主張し、あたかも反出生主義が苦痛軽減主義と完全に整合するかのように装う。だが実際には、両者の帰結と優先順位が根本的に異なることを黙殺している。