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当時の国際法では、少なくとも第一次世界大戦前の一般的な国際法秩序において、戦争・征服によって領土を取得すること自体が今日のように一般的に違法とされていたわけではありません。1899年・1907年のハーグ法規も、戦争そのものを禁止する一般的な武力行使禁止規則ではありませんでした。1907年のハーグ陸戦条約も、占領や戦争遂行を規律する法体系であって、「征服による領土取得は無効」という現代的な原則を確立したものではありません。

決定的な転換は1928年のパリ不戦条約、さらに第二次大戦後の国連憲章体制です。したがって、**「1910年なら、少なくとも今日の意味での『武力による領土取得禁止』を前提に韓国併合を違法とすることはできない」**という点は、韓国併合の法的評価では非常に重要です。

ところが木村氏の論文は、そこを「征服」という言葉を軸に体系的に説明していません。

これは読者にかなり大きな誤解を生み得ます。

例えば国際法に詳しくない読者が木村氏の記述だけを読むと、

「韓国併合には手続的瑕疵があった。しかしクロフォードは当時の韓国を『非文明国』と見ていたから、条約がなくても植民地化できた、と言っている」

という理解になりやすい。

しかし、本来はもう一段階必要です。

① 1910年には武力による領土取得そのものを一般的に禁止する法規範が成立していなかった。

② したがって「日本が武力・威圧を背景に韓国を併合した」という事実だけから、今日の意味での「違法な武力による領土取得」を導くことはできない。

③ そのうえで、韓国併合が条約による主権移転として構成されるなら、1905年・1910年条約について、代表者への強制、批准、全権委任、国内法などの問題を別途検討する必要がある。

④ そこで初めて、「代表者への強制によって条約が無効になった」という当時の条約法上の問題が出てくる。

という四段階です。