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欧州のVATは、日本の消費税と比べて税率がかなり高い一方、「高いVATをそのまま低所得者に負担させる」のではなく、所得税・社会保険料・現金給付・社会サービスを組み合わせて全体として再分配する設計が一般的です。

まず税率です。EUではVATの標準税率は15%以上と定められており、実際には20%前後が中心です。加盟国ごとに異なります。例えば、ドイツ19%、フランス20%、イタリア22%、スペイン21%、オランダ21%、ベルギー21%、スウェーデン25%、デンマーク25%、フィンランド25.5%などです。EUの制度上、標準税率とは別に5%以上の軽減税率を最大2種類まで設定でき、さらに一部の品目について5%未満の超軽減税率やゼロ税率も認められています。

重要なのは、「VATが高い=生活必需品にも全部同じ高率」というわけではないことです。食料、医薬品、医療、住宅、電気・水などには軽減税率を適用する国が多くあります。ただし、最近のEUの政策研究では、軽減税率は富裕層も大量に恩恵を受けるため、低所得者対策としては現金給付より効率が悪いとされています。特にレストラン・ホテルなどの軽減税率は、再分配効果が小さい一方で税収を大きく減らすと評価されています。

ここが「VAT+給付」の核心です。

例えば、仮にVATを20%から25%へ引き上げるとします。

低所得世帯: 「VAT増税によって年間5万円負担増」 → 給付・税額控除を年間7万円 → 実質+2万円

中所得世帯: 「VAT増税によって年間10万円負担増」 → 給付なし → 実質-10万円

高所得世帯: 「VAT増税によって年間20万円負担増」 → 給付なし → 実質-20万円

という設計が可能です。

つまり、VATそのものは基本的に広く課税し、その逆進性への対応は「税率を複雑にする」のではなく、「所得制限付き給付・税額控除・社会保障」で行うという考え方です。

OECDも、VAT単体で低所得者を救済するより、標準税率を広く適用した上で、低所得世帯に現金給付や税額控除を行う方が、理論上は効率的かつ公平だと評価しています。ただし、実際には「誰がVAT増税で損をするか」を正確に把握して完全補償することは難しいという問題があります。