>>549
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そして、あなたが指摘する「戦狼外交への転換」は、この構造との関係で見ると一定の説明力があります。研究上も、2010年代末以降の中国外交では、従来よりも強硬・対抗的な外交コミュニケーションが顕著になり、「国家利益」「領土保全」の防衛と結びつけて説明されることがあります。Oxfordの2024年の研究も、戦狼外交について、領土保全・国家利益の防衛という側面と、国内政治・ナショナリズム・習近平体制の要請という側面を併記しています。 また実証研究では、習近平期の外交言説に「dare to fight(敢闘)」型の要素が増えたことも確認されています。

ただし、ここから「戦狼外交は、日本の過去を問う言説が中国の領土保全を破壊する可能性に対抗するために始まった」とまで因果推論するのは、現在の証拠では強すぎます。

むしろ競合仮説は次のようになります。

A:対外的な領土・主権秩序への対抗
中国が、台湾・香港・新疆・チベットなどをめぐる自決・人権・民族権利の国際化に危機感を持ち、歴史認識・自決・人権を領土変更に結びつける言説全般への防御姿勢を強めた。

B:より広い習近平外交への転換
米中競争、台湾問題、香港情勢、国内ナショナリズム、共産党の統治強化など複数の要因によって外交姿勢そのものが強硬化し、日本の歴史認識問題もその一部として強硬に処理されるようになった。

C:日本側の歴史認識論が中国の問題とは独立して発展
日本の左派・リベラル・韓国系市民運動などにおける植民地主義批判や民族自決論は、それ自体の思想的・国内政治的な発展によるもので、中国の領土問題とは直接の因果関係を持たない。ただし結果的に中国の領土保全原則と衝突する部分が生じた。

現段階ではB+Cが最も無理のない説明で、Aは「十分あり得る戦略的文脈」ではあるものの、直接的な因果を立証する証拠が必要、という位置づけになります。