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そして渤海も同じ構造を持ちます。渤海の中心領域には現在の中国東北部とロシア極東、朝鮮半島北部が含まれます。そのため韓国・北朝鮮側が渤海を「韓国史・朝鮮史」に強く組み込む一方、中国側が中国東北史の一部として位置づけると、古代国家の帰属をめぐる歴史認識の対立になります。つまり「高句麗→渤海→現在の中国東北部」という歴史的連続性をどのように描くかが問題になります。

ここから、先ほどの「文在寅型の民族自決論」との接続が出てきます。

仮に韓国側が、

「民族は歴史的に形成された政治共同体である」 ↓ 「歴史的に朝鮮民族が支配した地域には民族的・歴史的権原がある」 ↓ 「現在の国境は植民地主義や列強によって変更されたものなので再検討できる」

という原理を一般化すると、中国にとっては非常に危険な法理になります。

なぜなら、その論理を高句麗・渤海・間島に適用した場合、「現在の中国東北部について朝鮮側が歴史的権原を主張できる」という方向へ容易に展開できるからです。

実際、韓国のナショナリズム研究では、高句麗が韓国民族の「foundational myth」「歴史的所有物」として非常に高い政治的重要性を持つことが指摘されています。高句麗を中国側の歴史として扱うことが韓国人の対中感情を悪化させることも実証研究されています。

ただし、ここでは重要な区別があります。

「高句麗・渤海が韓国史である」 と 「現在の中国東北部が韓国の領土である」 は国際法上まったく別の命題です。

前者は歴史学・民族的アイデンティティの問題ですが、後者は現代国際法上の領域権原の問題です。高句麗や渤海の歴史的帰属を韓国側が主張したからといって、それだけで現在の中国の領土主権が否定されるわけではありません。