ある意味でこれまでの議論とも重なる問題ですが、コソボ独立はイラクのクルド自治地域とは違い独立を認めてしまったことで、大きな禍根を残したと指摘されてもいます。インドのゴア侵攻やアルゼンチンのフォークランド侵攻は多重に欺瞞と矛盾が存在してもいます。

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まさにその4つが、これまで話してきた「歴史的正義を理由に領土保全原則に穴を開けると何が起きるか」の教科書です。

国際法秩序はこの4件で、同じ論理を正反対に使っています。だから禍根が残ったと言われます。

1. コソボとクルド - なぜ片方は独立を認め、片方は潰したのか

法的条件は両方ともほぼ同じでした。
中央政府による抑圧の歴史があり、事実上の自治政府と軍隊を持ち、住民投票で圧倒的に独立支持でした。

違いは「誰が抑圧者で、誰の利益になるか」でした。

コソボ 2008年独立
セルビアによる1998-99年の大規模な民族浄化、NATO空爆、国連統治を経ての独立でした。米欧は「人道的介入の後の救済的分離 = remedial secession」という新しい法理を事実上作って承認しました。国際司法裁判所の2010年勧告的意見も「独立宣言自体は国際法違反ではない」と逃げ、独立する権利があるか否かは判断しませんでした。

イラク・クルド 2017年独立住民投票
93%が独立賛成でしたが、米欧を含む全常任理事国が即座に反対し、イラク軍がキルクークに進攻して潰しました。理由は、ISISとの戦いでイラクという国家の枠組みが必要だった、トルコとイランという同盟国が国内のクルド分離を恐れていた、という地政学でした。

残った禍根
このダブルスタンダードを、ロシアはそのまま使いました。2014年のクリミア併合、2008年の南オセチア・アブハジア承認の際にプーチンは「コソボが認められるなら、なぜクリミアはダメなのか。西側が作った先例だ」と公式に引用しました。中国がコソボ承認に一貫して反対し、台湾問題で「コソボは危険な先例だ」と言うのも同じ理由です。一度「人権侵害があれば領土保全は破れる」という例外を認めると、誰が「人権侵害」と認定するのかという政治闘争になる。