ベネターの立論のステップは、驚くほどオープンで誠実です。

​ステップ1
(普遍的な土台の提示)
「私たちは皆、苦痛を悪だとみなし、それを避けるべきだという直観を共有していますよね?」と、誰にでも開かれた普遍的な合意から出発する。

​ステップ2
(非対称性の定式化)
その共有された直観を論理的に整理すると、「苦痛の不在は善だが、快楽の不在はそれを奪われる主体がいない限り悪ではない」という非対称性の構造が浮かび上がる。

​ステップ3
(論理的帰結)
したがって、これから生まれる存在に同意なく苦痛のリスクを背負わせることは倫理的に正当化できない(=存在させないことが勝る)。

​ベネターはこのプロセスをすべて白日の下に晒し、「さあ、この論理の展開にどこかステップの飛びや矛盾がありますか?」と問いかけているわけです。

だからこそ誠実な議論が成立します。