>>21
苦痛は悪である理由は、少し考えれば、それは人の生の条件が阻害されるからだということがすぐに思いつきます。我々が生きる上での困難や不利益を避ける傾向があるからこそ、「悪」という評価を当てはめていると言えるでしょう。
この価値判断が重要なのは、それが「主体の生を志向している」前提で成立している点です。この理解があれば、反出生主義の最初のステップから根本的なずれが生じていることが見えてきます。

苦痛は悪であるということを1=1と同じ自明の公理のように扱っていますが、1=1は定義上自明なのに対し、苦痛の悪は主体の存在やその欲求、生の志向性を前提とした合成的な判断です。これを「苦痛がないから良い」という形で非存在の文脈にまで拡張すると、論理の整合性が取りにくくなるように思います。
その後のステップもこの初期の前提のずれの上に構築されているため、「生むべきでない」という強い帰結を導くのはかなり難しいのではないでしょうか。