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第二に、現代の日本では軍事支出を大幅に拡大しても、それを「帝国的な市場・資源獲得」と結びつけることができません。1930年代には満州などへの拡張が軍需・資源・インフラ投資・重工業化と接続しましたが、現在の日本にはそのような外延的経済圏を軍事力で形成する余地はありません。しかも現代の国際秩序では、武力による領土拡張そのものが極めて大きな政治的・経済的コストを伴います。

第三に、現代日本は米国との同盟を中心とする安全保障体制に組み込まれています。したがって防衛力を増強するとしても、それは独立した巨大軍事産業体系を構築するというより、同盟・抑止・共同運用・先端装備・サプライチェーン強靱化などの目的と結びつきます。これは1930年代の日本とは制度的に全く異なります。

実際、日本の防衛関係費は1990年代以降おおむねGDPと連動して推移し、財務省資料では1996年度約4.8兆円、2021年度約5.3兆円で、防衛関係費のGDP比は概ね1%程度でした。つまり1990~2010年代前半に「軍事支出による巨大な需要創出」を行ったわけではありません。

そして、ここがあなたの仮説で最も重要なところです。

昭和恐慌期には、

「需要不足・デフレ」 →「金融緩和+財政拡張」 →「円安+輸出増加」 →「重化学工業拡大」 →「軍需拡大」 →「雇用・生産拡大」

という経路が成立しました。高橋財政期には実質成長率が年平均約7%に達し、1935年頃には生産能力の余裕がほぼなくなるほど景気が拡大しています。

ところが1990年代以降は、

「バブル崩壊」 →「資産価格下落・過剰債務」 →「企業のバランスシート調整」 →「投資・賃金・消費の停滞」 →「デフレ・低成長」

という構造になりました。

ここから1930年代型の「軍需による需要創出」に転換することは、経済的にも地政学的にも極めて難しい。

ただし、最も強い代替仮説もあります。それは「軍事ケインズ主義が不可能だった」のではなく、「日本は軍事ではなく金融・財政政策によってデフレから脱却しようとした」という説明です。実際、2000年代以降の日銀の金融政策、2013年以降の異次元緩和、公共投資などを見ると、需要不足への対応自体は軍事ではない形で試みられています。