上野俊哉(和光大学助教授、社会学/カルチュラル・スタディーズ)のエウレカ評 『ユリイカ』10月号

アニメを好んで見るDJやパーティ・オーガナイザー、
クラバーやレイヴァーにとっては、待ちに待ったタイプの
作品である。しかし、日本から聞こえてくる噂ではオタク、
アニメ業界での評判は芳しくない、というか、まともな
批評すらないらしい。毎回のサブタイトルがニューオーダーや
ビョークのトラック名になっているなど、オタクにとっては
ただウザいのだろうか?
しかし、この端的なジャンル横断をペダントリー(衒学趣味)
としか受けとれないとしたら、あまりにも貧しい反応である。
メカやギミックの細部や少女の表情、物語の反復に熱狂できる
感性は、あるトラックを聴き、リミックスの差異を読み/
聴きとり、また別の想像力に投げわたしていくような「読解」に
そのまま開かれている。このようなジャンル/シーンの横断こそ
STAND ALONE COMPLEX の論理でなくて何だろう?
サリンジャーやヒップホップ、グラフィティとハッカー文化が
交錯した「笑い男」を絶賛することのできる感性であれば、
すぐさま接続したくなるような複合体(コンプレックス)である。
それともオタクやアニメの文化はビートとリミックス、
パーティ文化のスタイルからの「引用」と「横断」は望まない
隔離状態(自閉モード)にいたいということだろうか?
少なくとも、踊ることと萌えることを動機として区別できない
オタクにとっては、今までこういうアニメがなかったことの方が
驚きである。