【書評】『ニュー・アソシエーショニスト宣言』/柄谷行人・著/作品社/2400円+税
【評者】大塚英志(まんが原作者)



 本書のあとがきは高瀬幸途と内藤裕治という、柄谷の運動をそれぞれ、実践と理論という正反対の裏方として支えた二人の編集者
への弔辞と回想によって占められる。そのせいか、本書は柄谷の民主主義への弔辞のようにさえ思える。かつて中上健次の死と
ともに文学を見送った柄谷は、今度は民主主義を見送ろうとしている。そういう批評的野辺送りの印象さえある。

 今世紀初頭、柄谷がNAMという社会運動を組織し頓挫したことをどれくらいの人が覚えているのか。当時、僕は僕より一世代上の
高瀬のいた出版社の一介のライターとしてその裏方に奔走する彼の姿に同情しつつ、他方で、柄谷に承認欲求が満たされることを
渇望する、僕より一世代若い批評家予備軍がまるでかつての新左翼にも似た内部崩壊を起こす様を遠く離れて見ていた。
選ばれたい彼らに選ばない籤引きの組織体を主張したのはそういう彼らへの「批評」にも見えた。