だが、一般的に「抑止」と翻訳されるロシア語のсдерживаниеは、日本語のそれや英語のdeterrenceとはやや異なる。deterrenceや抑止が相手を「思いとどまらせること」を意味し、全体的に非接触的なイメージを喚起するのに対して、сдерживаниеは、むしろ「抑え込み(containment)」に近い概念であって、限定的に実力を行使して「適度なダメージ」を与えることにより相手の行動を変容させるという、より接触的なイメージに基づく。ロシアの言う「抑止」とは「こっちに来るな!」と叫んで威嚇するだけではなく、実際に小突きまわして恐怖を抱かせるような行動を指すのである。