籠の外なる烏鳴き
烏答へて言ひけるは
善く歌ふ人善く愁ふ
な哀(かな)しみそ駒鳥よ

君は寵児(まなご)と愛(め)でられて
今や栄華(さかえ)の籠の中
吾は寂しき樹の蔭に
独(ひと)り友なき籠の外

清(すゞ)しき声のなかりせば
君は嘆きも見ざらまし
甲斐なきものと思ひきや
吾身の幸(さち)を今ぞ知りぬる

『島崎藤村詩集』、角川春樹事務所、pp.250-1