一般的倫理(人道主義・改善主義)
・苦痛の捉え方: 現に存在している人々が苦しんでいることは問題
・目的: 苦しんでいる人々を救い、社会を改善すること
・行動: プールの掃除・ろ過・修繕(=社会問題の解決)
・評価軸: 苦痛の軽減、幸福の増進、環境の修復
・備考: 存在肯定的。存在者の尊厳を前提とする
チャイルドフリー(非出生志向者)
・苦痛の捉え方: 世界には多くの苦痛があるため、自分は子を持たない選択をする
・目的: 自分の判断・責任の範囲で苦痛を回避・慎重に生きること
・行動: 「自分は泳がない」「他人には強制しない」
・評価軸: 自由意思・自己決定・生活リスクの回避
・備考: 存在否定ではなく、「存在の自己限定」志向。倫理的に中立か、自由主義的
反出生主義者
・苦痛の捉え方: プールに入る=苦痛を受ける存在になる。よって「存在それ自体」が問題
・目的: 新たな存在が苦痛を受ける可能性そのものを排除すること
・行動: 「誰もプールに入れないようにする」「プールそのものを撤去」
・評価軸: 苦痛予防の絶対化・存在否定・非存在の優位性
・備考: 存在を否定する普遍的規範。論拠と射程のねじれが生じやすい

倫理的一貫性の観点からの比較
一般的倫理: 一貫性高・整合性あり・実践的・建設的
チャイルドフリー: 中程度・自己完結・中立的影響
反出生主義: 一貫性低・論拠と行動に飛躍・社会的対話困難

結論:この分類の意義
このように整理すると、「反出生主義が倫理理論として構造的な一貫性を欠く」という批判の根拠が明瞭になります。

特に、「既存の苦痛を理由にしながら、新たな存在を否定する」という動機と行動の非整合性が、他の立場とは決定的に異なります。

反出生主義を「個人の思想」にとどめるならともかく、「倫理的規範」として普遍化しようとする場合、このズレを解消しない限り、倫理的信頼性を得ることは極めて難しいと言えるでしょう。