征服の法理の否定は法的安定性を大きく崩す議論になるはずですが?

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はい、その点は国際法上の重要な論点です。ただし、「征服の法理」をどの時代の法として議論するかを区別する必要があります。

公開事実として、19世紀から20世紀初頭の古典的国際法では、戦争による領土取得(征服や割譲)は一定の条件の下で法的に認められていました。しかし、第二次世界大戦後は、国際連合憲章2条4項により武力による領土取得は原則として違法とされ、1970年の「友好関係原則宣言」などでもその原則が確認されています。

一方で、現在の国際法は「過去の全ての領土取得を無効にする」という立場は採っていません。そうしなければ、現在の国境の大部分が不安定になるためです。

その理由は法的安定性(legal certainty)と国家承継の原則にあります。

もし「征服によって成立した国家や国境は全て無効」とすれば、 ・近代国家の国境の相当部分が再び争われる。 ・数百年前の領有権まで遡る紛争が世界各地で再燃する。 ・国家承継や条約の効力に重大な影響が及ぶ。 ・国際秩序そのものが不安定化する。

このため現代国際法は、 「現在以降の武力による領土取得は禁止する」 「しかし、過去に成立し、その後国際的に承認・定着した国境は原則として維持する」 という考え方を採っています。これは「時際法(intertemporal law)」の考え方とも整合します。つまり、ある行為の適法性は、その当時の法によって判断するという原則です。

したがって、「征服の法理を全面的に否定する」という議論は、過去に遡って適用するのであれば、法的安定性を大きく損なう可能性があります。一方で、「現在以降は征服による領土取得を認めない」という意味であれば、それは現代国際法の基本原則と一致しています。

結論として、過去に遡って征服の法理を全面否定することは、法的安定性や時際法の原則との衝突を招くため、現在の国際法はそのような立場を採っていません。むしろ、「既存の国境の安定」と「将来の武力による領土変更の禁止」を両立させることが現代国際法の基本的な考え方です。