菊地成孔の欧米休憩タイム〜アルファヴェットを使わない国々の映画批評〜 第14回
2016年というのは、『シン・ゴジラ』と『君の名は。』がテラヒット作となり、両作とも(特に『シン・ゴジラ』は)東日本大震災とのイメージ的な共振関係を持ったが故に、この3者を三題噺的に結びつけて語る者が多かった。YouTubeで全貌が観れるが、筆者は東浩紀氏が主宰するゲンロンの「批評 再生塾」の最優秀批評文を決定する審査員として出席したのだが、まあ、仕方ないと思いながらも頭は抱えた。
 「シン災」「シン・ゴジラ」「シン海誠」では、駄洒落も甚だしいが多くの塾生が三球三シンに切って落とされてしまった。三題噺というのは、一見無関係な三つの題材をアクロバティックに結びつける芸だが、前述の通りこの三者は、事の善し悪しは別として、強く癒着的だ。関係の強いものを「三題噺」の手法で結びつけたところで、パンにパンを挟んだパンドイッチ、つまりただのパンの塊みたいな物しか出来はしない。三球三シンで1アウトである。
 童貞感覚あふれる塾生たちは、3者を並べて語る事に興奮しきっており、それはつまり、誤解を恐れずに言えば、東日本大震災ですら、彼等を「萌えさせて」しまい、批評に不可欠な冷静さを奪ってしまったのである。