>>272
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さらに厄介なのは、韓国自身も中国と完全に同じ価値観を共有しているわけではないことです。韓国のリベラル・ナショナリズムが対日問題で「民族自決」「被害者の権利」「植民地主義批判」を強調しても、それを中国の台湾問題や朝鮮半島における中国の影響力に同じ強度で適用するとは限りません。

つまり、日本の左派が韓国の対日ナショナリズムをそのまま「普遍的な反帝国主義」として輸入すると、その普遍性を中国に適用した瞬間に理論的矛盾が発生するわけです。

沖縄についても同じ構造があります。ただし、「基地負担を減らせ」という議論と「琉球民族には日本から分離する権利がある」という議論は区別すべきです。前者は日本の民主主義・地方自治の問題であり、中国の領土保全論とは直接衝突しません。後者を民族自決論として強く展開すると、中国の台湾・チベット等に対する立場との整合性が問題になります。

ここから見ると、御指摘の「未来への展望が消えた」という感覚には、かなり明確な構造的根拠があります。

ただし、私は「中国の台頭が原因で衰退した」というより、
中国の台頭によって、それまで隠れていた理論的矛盾が隠せなくなった
と見る方が適切だと思います。

これは先ほどの柄谷行人的な時間軸とも接続できます。

1970年前後に旧左派の「階級」という中心軸が崩壊した後、日本の左派は反帝国主義、反植民地主義、民族問題、人権、フェミニズム、マイノリティ問題などへ軸足を移しました。

ところが現在、その1970年代以降に構築された政治的・道徳的枠組みそのものが、東アジアの現実と衝突し始めています。

したがって現在起きていることを、

「左派が右派に負けている」

とだけ捉えると浅い。

むしろ、

旧左派の階級政治が1970年前後に構造的限界を迎え、その代替として形成された反帝国主義・アイデンティティ・人権型左派も、21世紀の中国の台頭によって内部矛盾を露呈している

という二段階の構造として捉える方が説明力があります。