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牯嶺街少年殺人事件、いわゆる「クーリンチェ」の評価は、かなり特殊です。単に「台湾映画の名作」という位置づけではなく、現在ではエドワード・ヤンの代表作、さらに映画史上の重要作の一つとして評価されることが多い作品です。
1991年製作、約4時間の大作で、1961年の台北で実際に起きた少年による殺人事件を中心に、外省人社会、戒厳令、家族、学校、少年ギャング、音楽、恋愛などを複雑に絡ませています。日本では1992年に初公開され、2017年には3時間56分のデジタル・リマスター版が公開されました。
評価の核心は、「殺人事件を描いた映画」として見るとかなり奇妙なことです。事件そのものをサスペンスとして凝縮するのではなく、事件に至るまでの社会空間を徹底的に拡大してしまう。小四という一人の少年を中心に据えながら、彼の周囲にいる人間を次々と描き、その背後に1960年代初頭の台湾社会そのものが浮かび上がってくる。この意味で、事件は「主題」であると同時に、巨大な社会を可視化するための焦点になっています。
そして映画的に非常に重要なのが、ヤンの「説明しすぎない」演出です。人物関係や政治的背景をナレーションで整理することはほとんどなく、観客は暗い路地、学校、家、映画館、軍人村などを移動しながら、断片的な会話や視線から社会構造を組み立てることになります。したがって、初見では「人が多すぎる」「誰が誰なのか分からない」「4時間は長い」と感じるのも当然です。実際、現在の映画サイトでも、長さや人物関係の複雑さを問題にする評価はあります。
一方で、この「分かりにくさ」こそ作品の構造とかなり深く結びついています。小四が生きている社会自体が、彼にとって透明ではないからです。親の世代の政治的記憶、学校の権力関係、少年たちの抗争、女性をめぐる競争、外省人と本省人の関係などが、少年の視野の外側から作用している。そのため、観客も小四と同じように「全体像が分からないまま社会の中を歩く」ことになります。
ここが蓮實重彦的な映画評価とも相性がいいところです。『クーリンチェ』は「台湾の歴史を正しく説明する映画」として評価するより、画面の内部に無数の人物・空間・運動を配置し、それらの関係から歴史を立ち上げる映画として評価した方が本質に近い。
とんでもねぇ話だなぁこれぇ!? by東浩紀 #1010
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533考える名無しさん
2026/08/09(日) 01:48:22.330■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています
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