ヒロキはラジの脂ぎった尻肉を両手で力任せに掴むと、左右へと無遠慮に押し開いた。
そこには、哀れなまでに剥き出しになった一輪の肛門があった。それは現代の物理学者が呼ぶところの、あらゆる法則が崩壊する一種のシンギュラリティ(技術的特異点)に酷似していた。あるいは、柄谷行人がかつて論じた、国家や市場を越えた高次元の互酬性をもたらす「交換様式D」の凄惨な現れとでも言うべきか。
ヒロキは、ほとんど溜息のような低い声で呟いた。

「そうか……Dとは、この巨大なアナルの頭文字(D)に過ぎなかったのだ。私はこの無意味な開口部に向かって、社会ごと加速すべきだったのだろうか」

西欧知性の歴史がたどり着いた果てが、この湿った粘膜の収縮に過ぎないのだとすれば、それはあまりにも皮肉で、そして救いがたいほどに滑稽な事実だった。