もう少し人が悪いのもいます。こうした政治的な自覚の欠如を、「荒唐無稽」とかいってスリリングに見せる、「知の技法」で楽しい大学生活、みたいな脳たりんを使役している人です。まぁ蓮實重彥氏のことですが。昔ヌーヴェル・クリティクの紹介をしておいて、今は旧態依然とした文壇的時評をやる、といった程度の「政治」ですけれども。要するに若手の時には横紙破り、出世したら清濁あわせ呑むという高級官僚みたいな。
 元はフランス文学者でフローベールが専攻なんだけど、この分野で書いていることはものすごく地味なんだよね。昔、院生の頃友人が蓮實がフランスで提出した博士論文をコピィしてきたんで、ざっと見たことがあるんだけど、おそろしく古風なものだったと云う印象がある。
 なんでそんなものを見たかというと、私も一応フランス文学徒だった時代があって、今をときめく蓮實センセイがどんな論文を書いていたのか興味があったから見せてもらったわけ。そうしたら拍子抜けというか、日本で見せている顔と全然違うなぁ、と若かりし私は思いました。
 日本に帰ってきてから紀要なんかに書いたフローベールについての論文は、博士論文と打って変わった、当時流行の最先端で、今もセンセイの手法の中心になっている、リシャールとか、ルーセといった新批評(ヌーヴェル・クリティク)をそのままパクったような代物で、まぁよく勉強しましたね、という有り様のものだった。